おじさんの俳句memo(2019年)

2019年一年分の発表句。
単なるメモ。
ちょっと盛り上がった一年だった。
良くも悪くも。
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2019(H31)年

カレンダーが乱れ流星ばかり見る
友達Sのめだかが増えた町の事件簿
証人になれない虫を聞き分ける
歌を残して八月町が消えていた
足音がちがう秋野を抜けてから
かまきりに家訓を語る風の村
思いどおりの秋が見えない昼の村
ねばつく夜の水音だけが秋の村
家の灯がともらず秋の星の音
眠いばかりの町を台風それてゆく
家族四人冬のしゃぼん玉とばす

秋の日暮れのスイッチだった木のベンチ
花野を抜ける手立てなくしてラムネ菓子
鳥たちの村がまぶしい蕎麦の花
月満ちるまで鳥の羽音が残る村
さみしさのかたちを萩に問えば雨
ただしい人に疲れ木通が揺れている
ヒステリックにテレビが笑う台風間近
コップの水が信じられない金木犀
秋風が痛い映画のあとの街
黄落の渦にのまれるカフェ・オーレ

ここが花野ならば無意味なキスだった
人に疲れ紅葉に疲れカーラジオ
歌を忘れていまかまきりとの間合い
古着着るかかしの村は星の村
秋うらら干潟は父のいびきかも
海苔巻がばらける港秋うらら
古着着て昨日の木の実探す街
足首から冬いま竹楽という祭り
冬うらら岩に仏に手を触れる
木枯しが連れてきた猫だと思う


がらがら
山葡萄含めば鳥の尾が見える
影ばかり踏んで野茱萸のさみしい道
欲張りなキッスを見下ろして柘榴
秋うらら干潟は父のいびきかも
行ったかもしれないバスを待つ立冬
鴫鳴いてオフィスの僕は嫌われる
森にもの落ちてはじまる冬の詩
山頂からメール来たきり石蕗の花
山茶花さざんかがらがら石の登山道
風の夜の豆まいたはず食ったはず

東京を恨めず冬の死がひとつ
欅散る故郷の土はやさしいか
宇宙みな黄落のなか家族の死
時雨色に火ともす僕の誕生日
母として父として泣く青木の実
行き交う靴ばかり見る駅夕時雨
銀杏散らす雨だとすれば船が来る
父として正しい涙枇杷の花
ピノキオのゆくえは冬の鵙の聞け
三度目の帰ろう冬の流星群
鯨うねって星はこわれるためにある

(R1年)
あの雪この雪哀しい帰郷
ビル風に耳持ち去られ日記買う
住んだ街を指折り夜の金柑
街になじんだてのひら雪を受けとめる
ひとりごとが支える明日蜜柑むく
哀しいと言えそうな午後蕪を煮る
雨色の街にひらめを覗く穴
淋しさのまわりに散らす刻み葱
白封筒切らして凪の冬かもめ


足の爪(既発表)
春霞歯科医がのぞきこんでくる
青空の底に桜の仮設住宅
たけのこをゆでて鏡の夜の街
蜘蛛が巣をかけだす雨後のカスケーズ
街の灯に浮かぶ水母は銃と寝る
つくつくぼうし最期の鍵をかける窓
おりおりに見てきた桃が熟れている
引き潮の時刻秋暑の針の穴
足の爪死んで一月カプチーノ
異星人の血を引き涙もろい冬野


リズム&ブルース冬のぬかるみを踏む
時雨なら葬の火消せるかもしれぬ
東京を歩いた靴を捨てくしゃみ
滝音がぼやけ春のポケットティッシュ
温む水に沈む日本の闘士の眼
棺に春の翼持たせてやれたかな
陽炎やできる女の青ファイル
ロシアンティーこぼし春立つ天体図
ドヌーブのかかと日暮れの春時雨
つばめ来て村は骨ごともろくなる

鳥たちにだまされ町は東風のなか
福寿草君は青空ばかり見る
虐待が右目かすめてクロッカス
プラネタリウム靴に二月の砂が入る
村が消えそう陽炎に水をやる
たまご豆腐こわし黄砂をただ眠る
「浅蜊を買いに」言い置き君が消える街
さえずりの舗道でひとりだと気づく
もやもやと焼きもちかもね白もくれん
ピーターパンを見た子見ない子蝌蚪の国
出勤の息継ぎ損ね麦の秋
くらしの音が届く岩山いちご摘む
天草の凪を渡って蝉と会う


2018(H30年度)麦作家賞(既発表)

詩となるための雨
和紙を干す村のミモザがやわらかい
なぜ石を持ったのだろう花いばら
春の雨日々方舟を待つベンチ
好きになれない嫌になれない花の終り
馬刀貝を売る青空は鳶のもの
池を巡る五月詩となるための雨
梅雨の月終バス証券会社前
浜木綿や僕の背びれが打ちあがる
負け癖のついた花火に寝違える
花ほおずきの雨音ふらんすあたりから
ストリートダンス少年は柘榴を見ない
やさしさを土に求めている九月
たしかな秋は夜の雲からワイダの死
青空のこと誰も触れずに栗ひろう
哀歌さえ手拍子がくる星月夜
象の死が少し銀河を埋めている
覚えのある雨と覚えのない花野
実るもの実って村は霧となる
紅葉の村を無菌にする夕日
女の壺に落ちて久しい冬の蜘蛛
後を追えずにマフラー深く巻いている
夢に雨降りこみ葱を刻む音
団地からピアノ出されて雪の嶺
万両や風に故郷の領収証
ロボットが起動する街冬夕焼け


ピーターパンが飛べない潮干狩りの午後
鳥たちが村に眠りの種を蒔く
花束を渡され街は春の火事
とぎれとぎれの村の春耕宅配車
首くくる桜が夜を連れてくる
他人の道へ桜の夜が迷い込む
風穴が村を呑み込む花のあと
春かもめ余生ぐらつく石を積む
菜の花に来る風隠れ切支丹
花あけび手ぶらで歩く結婚記念日


2019麦収穫祭第1位

夕焼けを追って    
カーテンを外した部屋に春夕焼け
昨夜から雨が重たい黄水仙
エンディングノートに青と書く辛夷
虐待をうじゃうじゃ邪推おたまじゃくし
春落葉と空と水力発電所
さえずりの舗道で友が消えてゆく
監視カメラが動き浅蜊の砂を抜く
揚雲雀落ちてひさしいピーター・パン
春野から風が連れ去る若者たち
三つ葉浮く椀にあの夜のエルトン•ジョン
笹舟を流し筑豊芹の花
夏銀河骨打ち上げる波の音
アイリスの風に陰口ばかりのる
ぼた山に帰る鳥たち夕凪いで
夕焼けの奴は九重を想ったか
沢蟹の石をめくって切支丹
浜木綿の風にピノキオ横たえる
残業のパソコン光る蝙蝠や
鳴いたのは岩魚と信じられる森
禊萩の日暮れ空へと父帰る
花葛までふたりできっとたどり着く
憧れはヴィオロンだった櫨紅葉
秋夕焼け除籍謄本取り寄せる
ホロコーストの足音ついてくる夜霧
角砂糖積んで崩して夜が長い
海からの雨の元旦ナッツ噛む
フライ返し殺人事件石蕗の花
吹雪く夜の「君の瞳に恋してる」
ホラー映画を早送りして葱刻む
冬夕焼けまで待てと柩に手をかける


頭痛が妻の森を育ててゆく五月
僕の影はいつまで青い蓬摘む
聞けなかったこと聞ける岬の夏薊
芹洗うシンクに沈む結婚記念日
春霞入江を望むくらしを望む
春が深くて村の誰もが動かない
つり革の揺れて明日は芹摘みに
蕗の筋とれば街から雨がくる
街ぐらしで諦めたこと驟雨くる

ただの眩暈と言い置き墓へゆく日傘
綿菓子ふわり夕凪ぐ村がなくなる日
蕗の葉を落とし風向き変えてみる
筑豊の色は紫蘭の落とす影
時をなくした町で濃くなる楠青葉
枇杷熟れて定時に来ない宇宙船
ロボットが人を育てる黒揚羽
息子の見た空を知りたい花槐
夏の音にしばられ僕の夜が明ける
当たり前に雨の紫陽花眼底検査
ナースコールが止まず胡瓜の咲かす花
青空が蟻の羽音で欠ける町
紙袋から村がこぼれる秋うらら
青梅雨の街で右足だけ濡れる

紫陽花が風を濡らしてA病棟
輪郭がくっきり街は夏をゆく
街ぐらしに飽きて遠雷飴舐める
歩くただ歩く緑雨のイヤホーン
話相手がみな背を向けて虹の街
火星から靴音明日は蓮が咲く
青葉風と言うには遅い旅だった
あなたを真似て意味な崩すかき氷
綿菓子を巻き取る村の風死んで
御火焚の町に飛ばない鳥ばかり


八月六日の樹      
植木屋が来る青梅雨の役場あと
紙飛行機の折り目合わない梅雨荒れて
六月の街で小骨が抜ける音
合歓の花木星だけは指させる
礼文に行こう胸ポケットのサングラス
七夕の空に湿気ったポプコーン
青空と巻き爪街のソーダ水
サンダルが脱げて宇宙へ踏み出せぬ
蝉の一生僕の一生量り売る
吹き返しの街に八月六日の樹

夜濯ぎの胸にちくりと冥王星
いつから街は嘘を重ねて海紅豆
想い出せないプリンのかたち梅雨しずか
ほーたるのあとは天使が鼻を噛む
白粉花村が手放す子守唄
愛されたふりして父がゆく驟雨
約束は夏のぶらんこひとり漕ぐ
夏星座を並べ枕は病んでいる
街が好きと言えたあの頃青すすき




宙虫の俳句・・・・2018年分はこちら。お立ち寄りください。
https://s.webry.info/sp/musinandanikki.at.webry.info/201812/article_2.html


麦の会(ブログが移転しました。)
http://mugihumi2190.seesaa.net/


小麦句会(この句会は誰でも参加できます。)
http://blog.goo.ne.jp/nakadayo2018


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この記事へのコメント

餡子
2019年12月22日 08:53
宙虫さん、いろいろとあった年。
胸に沁みこむ作品群。読ませてもらってよかった。
身体に気を付けて、来年もよろしくお願いします。
宙虫
2019年12月22日 09:23
ありがとうございます。
終わりよければでしょうか。
また来年に向けてがんばります!