おじさんの俳句memo(2009)

麦5月号より麦12月号までを中心にまとめた。
既発表のものを並べています。
あくまでもメモですが・・・・。
今年は、九州俳句賞受賞というちょっとびっくりのこともあったが。
ここまで来てみると。
「ああ、結局同じ一年だった。」
という感覚。
何か変わったかと考えてみても。
「どこが変わった?」と誰かに聞いてみなくてはわからない。
そういうこと・・・・。

2009年
日だまりが消えゆく池の鴨といる
やわらかく雪片受ける無人駅
冬落日引き返すには遠い村
親しみの目を持つ冬の鳩とあう
枝ゆらす目白来ており櫓門
花柊の記憶が埋まる路地にいる
風音は火を焚く村で生まれけり
あんがい近い火事のニュースを見る日暮れ
ハムレットが生き抜いていて鶴が鳴く
タラップを降りて雪には雪の歩き方

海あおく塗って二月の都市計画課
春霞ノックのいらないあいだがら
芹をつむ昏れればここにいないひと
春時雨呼び名のちがう小路がある
ポケットの小銭じゃらじゃら花なずな
分割払いの車でゆく海黄砂降る
北風を一度は抜いて訃報来る
宇宙戦争の兆し寒林風となり
ざわっと動く鳥獣保護区の春の泥
雲仙に向かう足跡春干潟

おぼろ夜にコインが落ちる精米機
木蓮の記憶に青い地平線
不況都市花菜が錆びる風ありて
煮魚が焦げてひとりの紫木蓮
歩き歩いて花曇りからぬけられぬ
母がいる街は見えない花ぐもり
缶コーヒーいまから見える明日の花
余生のための技が見えない花筏
夢でしかないゆめ野火は地を這えり
だんだんと鳩に囲まれ三月尽

朴の咲く邑を抜けゆく父がいる
風音に遅れて森の辛夷散る
桜散る街にあじとを失えり
間際まで海が見えない街薄暑
残像に水音がある街薄暑
わらび野でひろいし家のかけらかな
さえずりの影が森からついてくる
さえずりの森で行き場を見失う
夏潮がひかる夜明けの米を研ぐ
山法師哀しい詩が口をつく

筋書きを保てぬ日暮れすいかずら
絮をもつものがのれない南風港
林道の起点は無風えごが散る
風に穴ありて真昼のえごが散る
青東風の島はまるごと石切場
午後のひかりと緑をすこし冷スープ
花えんじゅ街の踏絵をふんでいる
青トマト駅裏午前十時なり
肩透かしくって泰山木のしたにいる

梅落ちるにんげんとして生きている
眼圧が足りない午後の泰山木
泰山木夜にとぎれぬ音があり
風ひかる村のたいらな魚でいる
緑陰の村を時代が埋めてゆく
西瓜割るツァラトゥストラの遠い波
木槿散れば回顧が美談ひとつ生む
島ことばで居酒屋にいる街の驟雨
あの山は水の感触うつぎ咲く
トマト熟るる朝に浮上す潜水艦

軍人の背をして路地に打水す
軍港のかたちの街の空蝉や
のうぜんや羽根あるものが見る呉港
鉄色の夕凪があり街休日
地蔵まつりのほかははまゆういま盛り
少年の挫折ぽつぽつと河骨
プライドは短命街に蟻が走る
地下街を出れば八月重い風
遠花火記録にのらぬ記憶かな
笑いあうことがさみしい秋夕焼け
夕霧と村の境の水利権
ぷらいどに押されゆく街秋驟雨
青すすき予感がさえている真昼  


(2009年麦収穫祭)
空中分解 

春霞にんげんばかり山にいる
春の眠りにほどよい街の灯りかな
淡水に棲めぬ青虫雨の午後
春風の余力で熟れるおんなたち
太陽が春の軌道でゆく河川
行き先を三歩で迷う雪柳
みつまたや村には村の戦記あり
雨がくる街にちいさな竹の秋
山下りて日暮れの蕗を折るつもり
風死んでひとに還らぬ犬がいる
六月の森にかたちの見えぬ音
青田風のさきへ寡黙な影がゆく
八月を選り分けているスチール缶
草いきれ父にもどらぬ父の土
鍵ばかり渡され驟雨の街にいる
倒木の森を蟻より遅れゆく
風くるまでとんぼの国にいる人間
ひぐらしや誰もがのぞく山の穴
とうきびが刈られて青い封書くる
花野深くてまた来る風のわかれ道
秋風の島の時間で繰る季寄せ
にんげんの真昼を霧が越えてゆく
美貌とは無縁の村の櫨もみじ
黄落の街の見知らぬひとでいる
むささびが切る風少し血の記憶
冬眠のものたち雨を聞いている
逝く人がつなぐひとたち花ひいらぎ
ふるさとが濃くなる夜の息が白い
街冷雨床屋は鏡のなかにいて
風も石も寒林ゆらす音となる


2009九州俳句賞
(第41回九州俳句賞受賞)

包み

末黒野にあるという鬼の本籍地
ゆすらうめ咲いて小さな事故がある
うららかやみんなが落ちる街の穴
やわらかな風は田螺を眠くする
さえずりの山頂やがてくる沸点
あめんぼを散らして森の水を汲む
店の名はQではじまる驟雨かな
人間が呼び合うことのない水田
手をかざし邑の終わりを見る七月
炎昼の裏から街の循環バス
風尽きて村につぎつぎオクラ咲く
とうきびが刈られて青い封書くる
柿赫くひとは小さくなってゆく
栗売らる地下には地下の風溜まり
源流のそのまた源流木の実落つ
秋風や歩いて埋まる人類史
ラジオから罪状聞こえている冬田
少年の影がこぎだす冬のブランコ
風花の僕に都合のよい記憶
冬眠のものたち雨を聞いている


2008年以前のものはこちらに。
http://musinandanikki.at.webry.info/200903/article_39.html



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この記事へのコメント

ねこまま
2010年02月06日 22:43
俳句に詳しいわけではないですが、風景が浮かびました。
2010年02月06日 23:40
ねこままさん、ありがとうございます。
コメントおいていっていただけるだけで、すごくうれしいです。
俳句に詳しくない人からこのようなコメント。
僕にとっては最高です。
ありがとうございました。

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