おじさんシネマ(大阪ハムレット)

関西弁がいとおしい。
人生をおおう悩み。
「生きるべきか死ぬべきか」
ハムレットは悩んだ。
けれど、その結論は「生きとったらそれでええねん。」。
この映画は、日常誰でも抱え込むちょっとハードな悩みを笑わせながら、うんと悩ませながら、前に進もうとする姿をじっくりと描いている。
関西弁と大阪のおっちゃんやおばちゃんが行きかう下町の姿。
大阪をめいっぱい見せてくれる。
なんだかしっかり力を与えてくれる。
大阪ハムレット
この映画の原作は漫画。
実は読んだことないが、ここで一話分だけ読むことができる。
なかなか面白い。
http://webaction.jp/title/52.php
映画はこの「ハムレット」の家庭を舞台に少年を次男として、兄と弟の三兄弟の家庭を作り出した。
ハムレットのストーリーはきちんと織り込まれているので、違和感なく入り込めると思うが。
その兄は、すごいファザコンの女子大学生と恋に落ちる。
けれど、彼は、まだ中学生。
ただ、おっさんみたいに老けているだけだが。
「私のお父ちゃんになってほしい。」と言われてしまうのだ。
弟は小学校の授業中に将来なりたいものと聞かれて「女の子になりたい。」と答える。
そして、発表会のクラスでやるシンデレラの「シンデレラ」に抜擢されてしまう。
そんな兄弟たちと明るくて頑張り屋の母と父の葬儀の日にふらっとやってきて一緒に住んでいる父の弟。
母親は父の死後、病院で働きながら夜の仕事にも出かける。
男たちに人気があるらしい。
次男は、自分たち兄弟が全然似ていないことに気づく。
さらに父にも似ていないこと。
そして、「ハムレット」の悩みがそこにあったこと。
そう、人生最大の悩みなのだ。
よく考えてみると、一つ屋根の下で生きているからこそ家族という絆がつながるわけだが。
この事実は何を物語っているのか。
老け顔のあにきとつっぱりの次男そしてかわいい女の子の姿にあこがれる三男。
しかし、誰もその彼らを否定することはない。
彼らは思い切り挫折とぶつかる。
そして、それを乗り越えるためにもがくのだ。
松坂慶子演じるおかんがびっくりするくらいいい。
実際のところは描かれているわけではないが、何があっても動じない。
おっちゃんこと父の弟役の岸部一徳とともに存在感が抜群。
おかんとおっちゃんの間に恋愛感情があるのかないのか。
でも、そんなことはどうでもいい。
おっちゃんがみんなのためにおそろいで色違いの財布やTシャツを買ってくるエピソード。
前半はけっこう笑える。
しかし、後半は哀しいわけではない。
関西のどろくささがたんまりとこめられていて。
気づくと熱い涙がこみあげてくるのだ。
思い切り泣いて笑っていいのだ。
ちっとも洗練されていない大阪の街。
けれど、そこは何をしていても普通の光景として受け入れてくれる街。
ひょっとして父親が違うかもしれない兄弟たち。
ひょっとして恋人同士かもしれないおかんとおっちゃん。
これが事実なら、それはすごいことだ。
ひとつ屋根のした。
彼らはちゃんと家族の顔をして、明日へ向かっているのだ。
これから息子たちは数々の難題を抱えて生きなければならない。
映画で見つけたのは彼らの解決への足がかり。
また家庭に新しい形を生みながら、次の難題へ向かっていくのだ。
東京は暮らせない街。
大阪は暮らすとあつくるしい街。
そのあつくるしさが教えてくれるものは、ハムレットの死ではなく。
悲劇にあらず。
「いきとったらそれでエエねん。」

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この記事へのコメント

せいこ
2009年01月25日 23:19
あら、これ、おもしろそうだわあ。
コミックも一巻だけただ読みしたけど、ただのコミック漫画とはちょっとちがうね。
それとそのキャスティングがよか。松坂ケイコさんの大阪弁、聞いてみたか。
2009年01月26日 00:20
この漫画、けっこうコアなファンがいるようです。
いいですね。ちょっといい感じの毒があって。
是非、見てみて。
上映期間が短いかもしれないので要注意。
熊本は1月30日で上映終わりです。
くうが
2009年01月26日 15:08
素晴らしいレビューですね!!!

大阪ハムレット、やっぱ、最高ですよね!!!
2009年01月26日 21:47
くうがさん、はじめまして。
最高な大阪の映画です。
こういうこてこての映画、大好きです。
これを機に漫画も読んでみます。
31文字子
2009年01月30日 17:41
さきほど、れぎおん64号がとどきました。
貞永さん追善歌仙の留め書きを読み、深いあたたかいものが胸に流れました。ほんのわずかな時期を連句という場でまことさんとの時間を共有したわたしにとっても、とても共感できる一文でありました。まさに貞永さんの追善にふさわしい、いい留め書きであったことを自分のことのように喜ばせていただいています。ありがとうございました。

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