おじさん(Age.52)日記By宙虫

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help リーダーに追加 RSS おじさん俳句総まとめ(単なるメモ帳だけど。)

<<   作成日時 : 2007/09/14 10:09   >>

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パソコンがこわれて、データがみんな消えてしまった。
その中に、宙虫作の俳句メモが全部・・・・。
このブログに掲載したものをまとめて、もう一度保存しようと思い。
過去をさかのぼってみた。
なんとまあ・・・・。
どういったらいいのか・・・。
それでも、せっかくまとめるので、ここにも・・・・。
どんどん過去は遠くなるけれど。
俳句だけは増えてゆくのだ。

1999年
赤とんぼ父に似てきた我見つむ
ぶな林の落ち葉がかくす登山道
小春日が届かぬ職場にいて咳す
噛み合わぬ会議をあおるきつい暖房
モノクロのイブ・モンタンと会う霜夜
小春日のパン屑を追う鳩・雀
冬ざれや蛇口を閉じた露天風呂
山里の万両だけが赤い庭
山国はガードレールに大根干す
冬の干潟沖から人が歩いてくる


2000年
注連飾としてふるさとの藁売らる
初茜故郷はゆっくり息をする
二日はや雨がまっすぐ竹林
冬の雨カレー・ハウスに武者ひそむ
スケート場ウィンナ・ワルツで転びます
冬の海息つく浚渫船の昼
冬雲ゆく父の杉山あったはず
坂道を上ればきっと椿がある
送電線街を出てゆく不況の冬

マフラーの先俺たちの山がある
霧氷遠くにある微熱気味の午後
稜線負う小さな母に春霞
かすかな地鳴りどの水仙も横を向き
昨日春だったあたりの山に雪
蜆汁見てきた空の深みあり
百段を駆ければ春の磨崖仏
迫る山々この青空が春なんだ
ビジネスホテルにあるひとり分の春霞
芹千年空より来たる磨崖仏
さくら散る二タ夜の夢の抜歯あと

引越便着いて桜と積み替える
てんと虫ぼくの密使になって翔べ
河鹿鳴くどこかに手紙の届くころ
見えない力が見える水子の風車
国分寺の薄暑横切る鍬がある
青葉風まとい山頭火が越えし山
渋滞のワイパーに散るいろは藤
水匂う夜空に著莪の花がある
水切りのうまい少年すかんぽ伸ぶ
村中がちゃん付けになり藺刈どき

黒南風が櫟の山を裏返す
日傘ゆく路地に「大空洋紙店」
蟻の列にぼくの勤勉まぎれこむ
ふわふわと蟻が持ち去る昼の影
人恋しい宵が一度は夏にくる
梅雨しずかふたりの息を闇にする
田を一枚カラフルに植える家族がある
夕立を呼ぶ風だろうかクリスティー
その一打とんぼを越える少年野球

カメムシが気になるとても酸っぱい実
青空に咲くダリアなのに悪意がある
夏帽のリズムは個々にゆく草原
雲支えんと今年竹は思い込む
酔客のひとりに樹医が青胡桃
バックミラーにいまふるさとが夕焼ける
湯あたりをして青無花果の路地にいる
酸欠や赤とんぼたちにも馴染めない
煮つまりし蝉時雨から暮れてゆく

夕映えの棚田オクラが糸を引く
秋桜句帖に今日がばらけおり
似顔絵の目線はかたく秋茜
少年事件赤ばっかりがカンナじゃない
深呼吸で鶏頭は散るものなのか
この国はアジアのはずれ稲の花
なーるほどトム・ソーヤなんだ猫じゃらし
夕昏れはおしろい花に息をつぐ
花オクラ矛先を向けるべきは天

秋潮のぼくにないもの鴎翔ぶ
秋空にぱりぱりと巻く設計図
放浪といえぬ泡立草がさわぐ
かかわりを断ちたい葛が気にななる
晩秋の彩は千年迷いなし
あれやこれやしがらみの街冷雨にあう
桜葉散るあのころにはあった夢
ちちろ鳴くいつまで母でいるつもり
九度目のチャイムできっと冬が来る

梅擬どれをとっても破調なり
落ち葉には完結があるぼくの四季
実南天母国を語ってくれますか
黄落の羅漢は笑みを絶やさない
星ひとつ闇のどこかに阿蘇の冬
からすうりの百年たかがしれている
黄落のやっと歩幅があってきた
石畳磨耗してゆくなり世紀末
竹林の出口は冬とわかっている
ポインセチアの街は虚飾症かもしれぬ
冬海をきっちり視野に分譲中


2001年
雪嶺遠く担任をぼくは好きだった
本来は葉牡丹でいたい花時計
ここまでのニッポンでいい冬の雷
金柑をぬすみ一日がほろ苦い
ガムテープ一気にちぎり冬を詰む
これしきの雪で行き来が遠くなる
ビバルディを「春」しか知らぬ街に雪
猫の恋カスタネットを乱れうつ
どろどろのドラマにしたい春炬燵

梅散って微熱に効かぬ漢方薬
竹林のざわめく二月歯が浮いて
赤ワイン春はあけぼのなどという
紅梅白梅庄屋屋敷はがらんどう
春だというのに穴ぐらの珈琲店
さえずりの都心は空を深くする
やすらぎのコーヒー雲雀が唐突で
春はそこまでボンネットバスの工具箱
蝶消えて未知なる色のもうひとつ
分譲の規格に沿って散る桜

屋上で固まるうわさ白木蓮
犬走りのぺんぺん草が仲たがい
桃が散る午後は緩めのジャズがいい
河口まで春はさみしいクリームパン
風はのどか街がどこかで傾斜する
句にならぬアネモネずっと晴れていて
記念日を背負いやどかり迷いだす
かたつむりにとっては具象雨煙る
さくらさくらモンキーダンスが流行りだす

つぎはぎはひとつの日本夏燕
夏川蛇行手紙を少しきつく書く
養殖筏沖で五月がやや荒れる
城下は薄暑青春の目で手を振れば
もう夏空だ盛り上げるにはひとり欠け
ぎしぎしの花ありし日が縁どられ
ほうたるの消えてなにかが闇にいる
あっちのほたるこっちのほうたる国分寺
どの色の紫陽花目当てに歩こうか

古傷は少しだけ嘘河鹿鳴く
でで虫を落とし穴まで誘い出す
はたと南風やんで他人といるベンチ
百人に聞けばむかでを裁けるか
桑の実に染まる漢がやはり好き
アラビアのぱすたが激辛さるすべり
小石蹴るくせがある日ひまわりに
犀のいる夢にもどれぬ熱帯夜
くろがねのアゲハがとべぬ民芸村

三度目の陽炎を踏み父と会う
向日葵になりたくてロシヤヒマワリ咲く
言いそびれ草いきれから逃げられぬ
青柿落ちおとこがすることしないこと
ゴスペルを知らず黒百合生きている
古書店でつくつくぼうしが咳をする
渋滞の始めはいつもひぐらしなり
ひぐらしや歌碑が白秋らしからぬ
あいまいな峡の伝説葛はしる
鯖雲を画家はどうやら見捨てたり

ぽっかりと晴れて石榴があせている
稲架を組むまわりは誰も来ぬ日昏れ
烏瓜いまさらロミオにもどれない
ななかまどつきつめられて笑えない
空に棲むわけにはいかぬポプラ散る
小春日のポップアートが色あせる
自然薯掘る美女が眠れるくらい掘る
育つものあり冬野が少しやわらかい
父でいようとまだ筋書きの落葉焚く
石蹴りのルールが増えて銀杏散る


2002年
言えぬことある少年の息は白い
試着室飛んで出てきた冬鴉
高階に雪降る「ふるさと物産展」
黄水仙おとこの笑いが決め手欠く
昔ながらに落ちる椿の不器用なり
春の空仰ぐ本意はあやふやなり
まだ街をめぐる風なり辛夷咲く
「よかこったい」と白木蓮がなじむ空
すみれ・たんぽぽ人と離れてひざを抱く

咲きだした躑躅が埋める古傷あり
息ぬきは花楓の空パンの耳
はぐれれば白詰草と寝てしまう
老いてからの眠い友情風夏めく
長崎はちりぢり沖に卯波あり
板金がひびき紫陽花の彩定まらず
ほうたるの水辺の電話が他愛ない
どっちつかずの空向日葵がこぶりなり
きゅうり曲がって手つなぎ遊びの鬼ばかり
紫陽花が濃くなるティンパニーの連打

窓は海ががんぼも乗る夜行バス
おしろいばなばかりで遺産が少しある
カルデラの水脈があり銀やんま
錆の釘見える裏木戸蓼が咲き
長崎忌無口と書いて履歴とす
梨売りに停められ日向(ひゅうが)まで行けぬ
人として浮いて水母に囲まれる
薩摩富士の向こうは荒海大根干す
どうでもいい秋めく街に階段ばかり
きっと秋と言わせるための雨が降る

緻密さを欠いた野萩に掻き傷あり
じりじりとテロの火種で焼く秋刀魚
蕎麦の花老いあつまれば笑いっぱなし
源氏に追われ日向(ひゅうが)に落ちる滝は秋
葬が散る庭の胡桃を落としつつ
雨のはじめは亜細亜がにおうあけび割れ
肉声のきんもくせいが届きおり
ちちろ鳴く膝を抱いてまだヒト科
りんどう摘んで悪事を日記には書かず
算数のくらしの範囲ひつじ雲

ほろほろと落ちたむかごのゆくえ知れず
看板が倒れなりゆきの竹の春
霧の山中カーラジオから身の上話
観音まで刈田の雨がたいくつなり
秋潮がひろがり車窓で溺れだす
鳴き足りぬ虫いて朝の珈琲沸く
墓苑からむかごたぐれば山頭火
ぴしぴしと榧の実を踏む古戦場
秋を深めるホテルの吃音電動ポット
靴音の都心は霜のない霜夜

大根切ってあっさり離婚話する
フロントガラスに落葉貼りつく不況都市
のっぺらな和紙人形にある霜夜
雪来るかどの山茶花も散り急ぐ
からすうりいつもの溝を越えられぬ
カーブする市電が青い冬の霧
冬の鵙よ じれったい僕が父である
散るものが散りゆく時雨女医が来て
古傷がありココアパウダー厚く振る
風呂吹きの芯のあたりに過労死あり
僕の遺書はフィクションなり虎落笛
手つかずの杉山に雪クローンあり


2003年
カーリングのしなるブラッシュ糖衣錠
あらすじの武蔵を追って山茶花散る
ダンスホールだったあたりに地球ごま
素通りのつもりの入り江ぽんかんや
B級映画が泣けるみぞれの博多港
ポリープありとにかく甘い冬苺
街は冬追い越されつつ杜甫を読む
羽打つもの見えて運河に澱む冬
蓑虫を掌に少年はよくしゃべる

実南天恋愛映謔ェもたれている
迫る雪嶺大きな帰郷かもしれぬ
長湯して山は無呼吸症候群
金柑をもぎ朝刊のおくやみ欄
踏み込めばものわかりのよい春の海
しだれ梅菩薩の眉がつながって
どう転んでも戦争がある薄氷
出棺までわがままでいる冬薔薇
ものしずかなくらしに雪がまぶしいぞ

深い森がまだあり冬の種袋
椿散乱大河小説でも練るか
少し他人になったふるさとの春銀河
終電の枯野が開かぬスペアキー
売りに出た家のつくしがさわがしい
沖からの春のうねりがなまぐさい
三月のゆるい拳の労働歌
春の風介護センターでゆきどまる
こぶし満開村のマジシャンまだ固い
浅眠りして陶器市のまぶしい辛夷

釉薬で仕上げる花の登り窯
隠れてばかりいられぬ土手の花だいこん
野仏に虻の羽音がやわらかい
花の雨濡れた葉書にある不安
助手席にこぼれた蓮華のゆううつ
末黒野の日昏れは風も迷うなり
飽食の漢らが来て野火放つ
入れない縄電車ゆきミモザ咲く
にんげんが歩く街並み水木咲く
下り坂ばかりの阿蘇の野焼きあと

濡れているぎしぎしあたりにあるあじと
四月七日朝は戦さをふりかけて
通勤の銀杏若葉に戦禍の報
にんげんをどこにおさめる花馬酔木
湖はのどか杏仁豆腐掬おうか
街へつづく春野を僕らこぼれだす
逃水や漱石旧居が俗っぽい
メールアドレス変えかげろうの東京
けんけんがにがて陽炎取り逃がす
沈黙は僕だけ森にさえずりあり

末黒野のアンモナイトにある体温
潜もうか僕に手頃な竹の秋
すかんぽの伸びて川原に丸い音
少年の描けぬ稜線つつじ燃え
もっと濃くなる青野にひとは追いつけぬ
イラク以降おくらが空にひしめいて
甘口の雑評をすてる夏の河
映画館出て紫陽花の色がない
蛍とぶ明かすことない火の記憶

梅落とすために熊野をから拭きす
風のない街から蚋を連れだすか
川とんぼの羽音を知らぬパレスチナ
でで虫にやる改正前の時刻表
教科書からこぼれる史実花茗荷
少しずついくさに散った穀象虫
シーボルトの医具に錆浮く五月闇
人間もくらして阿蘇の遠郭公
蛙鳴く確かな闇のある故郷
家を解く話の中に蟻の列

縦に割る胡瓜は破壊兵器かも
距離を置き梅雨の岡本太郎に立つ
古傷にからむ友情はまゆう咲く
梅雨しずかあの星はもうこわれたか
米を研ぐ夕凪少しだけゆれて
洗われる岩から島の夏うごく
青みどろ裏口に着く救急車
ひとの道のまんなかにある蝉の穴
ひび割れの道で男が蝉散らす
ところてん跳ねて運河に棹をさす
短調のソナタよ蜘蛛がおりてくる

森痩せて夕凪に買うにぎりめし
大河へとつながる音で桃すする
CMばかり聞こえる夜の驟雨
板塀つづく国のこんとん緋のカンナ
楽隊のあとをコオロギゆく祭
渋滞や花火をとぎれとぎれ聞く
ひとりのぶるうすサルビアが遠ざかる
八月の電車の席を埋めている
横切るために降りる東京は残暑
八月の濡れた翼で発つ東京

仰ぎあおぐ空から秋のくる石段
現場とぶ声が野太い秋の空
底をつく清水がアテネへまいもどる
開いても花火は僕に落ちてこない
疲労する街よコスモスは対岸
咲きだした萩を巡って言えぬこと
火星へと翔べぬこおろぎ鳴き通す
量り売りすればさみしい猫じゃらし
薩摩街道味噌屋を抜ける秋風
おおらかな神楽は月を無駄にせぬ

遠神楽九月の稚魚が跳ねている
曼珠沙華を翳あるぼくが接写する
島原へ渡らず青いみかん剥く
テロリスト潜む芙蓉が咲きそろう
ケルン積む人間霧を来て霧へ
部屋の灯を落としてから鶏頭
フロントガラスを月がはなれる古戦場
咲きそろう松虫草の尾根がもろい
天草の遠くが見える榠櫨の実
月は上弦やがてひとりになる舗道

朝霧を抜けて望郷音になる
蕎麦刈って故郷に座る場所がある
少しだけ道をはずれて零余子もぐ
花野を帰る僕らの橋が錆びている
靴を買う街の紅葉まだ浅い
スイングジャズにあけくれていた櫨は実に
昼霧のなかにくらしを置いてくる
冬の灯を幾世継ぎし武家屋敷
木の実踏んで観音ふたり降りてくる
いか刺が透けり唐津の沖晴れて

貝死して白し時化の浜に立つ
金運の島へ出る船石蕗の花
携帯が光るホテルに時雨来て
遊び相手と別れた街の十二月
ぽぷら散る小説はまだプロローグ
冬うらら返事のいらぬ便り書く
廃坑の町にぐつぐつ鮟鱇鍋
からすうり決まり文句がひとつ増え
雑食のおんなが藁を積んでいる
大根からこの星に水落ちてくる

かーなびにバイパスがないまだ冬野
冬を来たおとこの珈琲が深い
赤紙のにおいをさせて牛蒡削ぐ
少年のどこを捨てよう冬銀河


2004年
街は冷雨自由な両手ふさがれて
胎教になかった冬の波を聞く
走りだそうか冬にはふゆの貌をして
なにか動いたふるさと雪がさわがしい
森は冬翔べないものが音たてて
半身浴遠くを見ている街の冬
笹鳴きを歩いて抜ける分譲地
空を呼ぶために半切りする蜜柑
対岸の枯野へ鴉ばかりゆく

水仙咲く荒野に人の居た記憶
冬を飛ぶものの残像ビル解体
金柑が頼り寺町をさまよう
靴紐が結えずみぞれの刃物店
九条をうのみの暮し雪が積む
底冷えの雑感ばかり市電降りる
はたと止む寒風青い和菓子買う
二月尽ただただ泣いてきた映画
若者が降りない二月の環状線

仁義などという青年東風に立つ
岬から薩摩をさがせば椿落つ
黄砂来て島がやさしくなってゆく
何か言うてる地蔵の背がまるい
桃開くもう聞いていいことがあり
どの露地を行っても東京春の星
桃散れば紙のビル街まで遠い
日比谷ゆく人に足りない春の風
春をゆく表も裏もあるマップ

水音のない東京に黄砂降る
立ち入れぬ牧野は春の風ばかり
菜の花のマップひろげてから迷う
水音のとどいて二日目の辛夷
たんぽぽとひとりぽっちのぽっちのかげ
逝く人がいて菜の花ばかりのまぶしい村
紅梅のしだれ流浪を考える
沈丁に雨どこかでピアノ淡々と
ひとの灯のとどかぬ桜見ておりぬ
野火放つ農夫は老いてまだ農夫

桜三分厚切りにする明日のパン
春の闇干潟ひろがる音を聞く
頬白くる屋敷に文化財保護法
桐が咲く空にどうでもよい話
春に散るものがまだある日田盆地
藤が咲く家族のかたちのある水辺
空へ咲くつつじと出会う犬の道
寺の灯で遊び石楠花濡れている
口べたな神のいる野のきんぽうげ
濡れていい雨だと思う竹の秋
花茨一級河川は蛇行せず
コンビニで見ている薔薇の影ばかり
著莪咲いて水が生みだす峡の色

シャッターが切れぬ闇あり遠郭公
花楓の風がひっぱる疲労感
枇杷をむくひとりの夜の雨が好き
半日が重たい紅薔薇ばかり咲き
クレソンの花よ戦さが途切れない
あらそいの地球を朧呑まないか
石積みの棚田を六月降りてくる
驟雨きて干潟に生きるものの穴
おらんだへ遠い水門夏満潮
蚋連れて仏の国の坂に入る

緑濃く島にはじまる祈りの刻
どくだみ咲く愛染堂に赤い神
橋を渡らず半日枇杷を売っている
滝飛沫受けて少年らの体温
駐屯地まで青い紫陽花ばかり咲く
青梅雨に煮崩れるまで飛魚(あご)でいる
壁となる緑陰父よ抜けてこい
母ごしの明るい枇杷をもぐ算段
のうぜんの故郷がありいつでも背伸び
打水の町に昭和のジャズがある
白木槿咲いて屋敷に古い疵

青空のこわれる不安古代蓮
捕り逃がした蝉が集り阿蘇で鳴く
文具屋の記憶のひとつさるすべり
カンナ燃え都心の時間が頼りない
サルビアの石畳から街へ出る
睡蓮にさざ波の立つ夜のラジオ
甌穴に蟹が潜んでいてさみしい
八月の波にこわれる少年ら
メロン切るまだあとのある昔話
長崎忌男らの掘る共同溝
旅のなかばの友が置きゆく青蜜柑
若かったと教師悔いいる夏銀河
蝉の死を数えてゆけば街に音
肩書きの増えて石榴が割れそうだ
口笛を吹けば野萩がやっかいだ
桃すする村に砂漠が少しあり
まだ青い阿蘇のすすきに触れてゆく
雲仙地獄の硫黄にむせるびーどろ館
九月一日温泉たまご売り不在
高校が沸いて青柿落とす風

栗落ちる休耕田に道があり
コスモス畑話の続きを置いてこい
鶏頭の燃えて検査日の空腹
吊橋の空へきちきちばった跳ぶ
通草割れ山の流れが速くなる
語りたい男と歩く花野の午後
自叙伝に入れたい故郷のななかまど
交差する鳶の漁港に立つ十月
稲架を組む島の時報で島を出る
どこかにぎんなん信号を待つ御堂筋

十月の水掛不動にある疲労
地下鉄の上の地下街ポインセチア
土産屋の言っていた雨蕎麦刈るころ
桐の実の町に八百屋が消えている
きんもくせい咲いて故郷に僕の不在
柿熟れる棚田の肩の息づかい
落人の猥談蕎麦は花つけて
山頭火とわかれてからの櫨燃えて
まぼろしの蛇笏と歩けばななかまど
オルゴール閉じて銀河にあるこだま

遊び足りない街の夜長に鳥のいる
造園業の街に鳴き継ぐ虫がいる
栗茹でる余白の午後を女優の訃
テレビから銃声洩れてくる月夜
アングルに冬日貼りつく朝の空港
最終便消えて底冷えの健軍町
逆行の冬野に消える測量士
風の出て冬霧砂洲にとどまらず
黄落の激しく町の名が見えぬ
冬色の街の灯曳いてゆく車窓
ポインセチアにぶつかってゆく地下街

烏瓜の空ひろがって散るもの散る
冬霧の街にぐりむのラジオ劇
横顔のさみしい人に鴨が浮く
帰路につくためのワイパー時雨来る
男らの追いゆく森の落葉す


2005年
湾見えて街に濃淡ある霜夜
誰もいない二日ビゼーを聴いている
変わらない道順でゆく街二日
今朝はしずか雪にはばたくものがいて
流れゆくものが見えない冬銀河
浮くものになれず河原で剥くポンカン
冬雲の切れて洋食皿ふたつ
一筋それてざぼんに触れる通勤路
枯色の靴音がくる美術館
春立つや異国の風を見る麒麟

ルウを足す二月のカレー風が出て
開かれぬ窓ばかりの町にある巣箱
また冷雨城が揺るがぬ街にいて
家系図があいまい砂を吐く浅蜊
踏み絵のある島の浅蜊が砂を吐く
まだ咲かぬ桃の事情があるらしく
空を見たがる明治の貌をもつ雛
おたまじゃくしひしめく国の雲切れて
まだ開くシクラメンの愛がさみしい
野に春風僕にデジタルカメラの刻

古代史の流れるラジオ野蒜の昼
シャッター閉じた街を春風吹き抜ける
重いものも足されてゆく野焼きあと
この空の水にもどれぬおたまじゃくし
黄砂来て遠い町から錆びる音
水辺からこわれる国の蓬摘む
朝刊が差されたままの紫木蓮
整理のつかぬ夢の真上の白木蓮
散る花の翳を踏めずに鬼といる
まだ影を持たぬ桜とあう都心

春の雲路面電車と待つ信号
くらしにない春の水音森を出る
やわらかな陽の街がある花馬酔木
濡れてゆくひととはぐるるつつじ寺
池に落ちる花になりたいまむし草
青すぎる空が牡丹をもろくする
花桐の空に背もたれ欲しくなる
はぐれきて啼く鳥といる五月闇
朴の咲く森に父との午後がある
沢蟹の逃げて水音荒くなる

浮草のまとまらぬ風葬了る
兄の道消えて木苺摘めぬまま
音のない窓の灯薔薇が痛くなる
空青ければ左岸の姫女苑から刈らる
夾竹桃咲いて白紙をくっている
えご咲いて街に薄暑の音がある
しょうぶ田に風にもなれぬ虫がいて
風やんで幹に六月もたれおり
青梅雨の他郷に住みて路地をゆく
手つかずの稿ありゆれる合歓の花

濃くなりゆく青野に電話鳴りやまず
官軍墓地のまわりは桃が熟れている
輪郭からこわれる父の濃紫陽花
機械油の匂う青年藻に花が
夕凪の街でオイルがしみとなる
李かじれば落丁のある現代史

しずかな決意まわりは黍の花ばかり
かげろうや母がともして消すあかり
年表の乱世ががんぼ来ておりぬ
雷遠く街の記憶をはがせぬ夜
街の空見えない蝉の樹下にいる
しゃべり足りない少女らカンナの駅に降り
座りのよい南瓜が太る故郷なり

灯をゆらすものが銀河に沿ってゆく
円窓を銀河が埋める疲労感
霧晴れて森の緑が抜けてゆく
秋色の東京父として歩く
珈琲がさめてしぐれる虫といる
まだ青いすすきを抜けてくる未来
女郎花ばかり色出す屋敷あと
風のない浅草九月がこだまする

連れのない秋空坂の町にいる
月に引力弦楽四重奏を聴く
台風の周辺にいてレジを打つ
ばった跳ぶ音たてて飛ぶ台東区
青春が揺らすブランコ曼珠沙華
濡れているブランコ月に近づけり
芒・すすき風に押されるまま歩く
微炭酸飲んでうしろの鉄道草
次の世の風かと思う泡立草
タワーの灯ともれば海に秋のおと

秋刀魚の骨はずしてビルに映るビル
大型ビジョンのまわりで鯖雲こわれだす
街の音揺れきて泡立草から昏れる
秋を鳴く鳥の一羽でいる日昏れ
ひとを嫌う猫に都心の月満ちて
ポテトチップスくだけて秋の滑り台
空(から)のバス出てゆく午後の泡立草
オカリナが不慣れな午後の櫨紅葉

燃える櫨ばかりの坂の海のおと
銀杏黄葉の他郷にやさしすぎるベンチ
イヤホンからしょぱん洩れくる黄落季
石蕗咲けば街が他人になってゆく
体温になれぬ街の灯ポインセチア
アスファルトに木の実ころがるいま何時
底冷えの音する町を見る仁王

枇杷が咲く志度寺で靴の砂を出す
砂をはたいて午後の鴎に近くなる
冬薔薇のもろい日暮れに触れている
人参を抜き湯煙の坂にいる
十年を詰めて時雨の引越便
山茶花の女ばかりの家が越す
音たてて歴史書をくる十二月


2006年
饒舌な神がくる冬の望郷
雪を来て雪を閉め出す疲労感
望郷が冬ざれの野をはなれない
空に浮くものを残して滝凍る
白地図を丸め霙の街をゆく
雪はらい地下の地中海レストラン
桜島大根洗わる遠くのクラクション
踏み込んだ話が焦げている焚き火
抜け道を誰か踏みたる霜柱
タンカーの向こうに冬霧(ガス)の門司がある

拍手沸き冬の残響となる都心
通勤の川に二月を追う魚影
街の灯に届かぬ豆を撒いている
豆を撒く追うもののない庭に撒く
梅干しを含めば冬のおわる空
丸くなるたこ焼き恋の猫がいて
犬ふぐり吹かれてみたい風がくる
CMのあとの子殺し鳥雲に
沖は春浮くものでいるペットボトル

白梅の夜がやわらかい街の雨
朧夜のキッチンに合わぬ蓋ばかり
開かない窓越しの街白木蓮
あくびして春が足りない町をゆく
花こぶし町になじんでゆく日昏れ
春耕の種子島ゆくレンタカー
島椿明るいひとに落ちてくる
三月の島は真水のなかにある
島でくらして三月の傘たたみおり
雨音の離島にやさしすぎる桜

躑躅ちらほら島の歴史がある南端
ポメラニアンが風に追いつく野焼きあと
対岸の春に欠かせぬ少年たち
羽音する桜のしたのフライドチキン
引力のまばらな街の花あかり
シーソーを雨の桜が埋めてゆく
町に翳きのうとちがう紫木蓮
少し蒸します街につぎつぎ咲く躑躅
げんげ田にほどけたままの縄電車
あざみ咲くつかみどころのない町史
おぐらあんパン割れば真昼の春落葉
気後れの街に雨降る薔薇に降る
石楠花のむこうで動く小石原
牡丹咲く陶土のいろの村に咲く
触れゆけば陶器のいろになる五月
窯元にたたない煙麦の秋

竹の秋やさしい疵のある器
配送のトラック出てゆく葱坊主
甘え方を知る鳩といる梅雨の兆し
時報錆びて桃は実ったばかりです
雨を出てゆけず試食の熟れトマト
もなか割る寺の真昼の青葉雨
濡れて来て青い胡桃の陰にいる
テロリストの死がある今日の枇杷のいろ
ゆるく踏むブレーキ麦の秋に雨
ジャズピアノが洩れくる雨の花空木
事件とも事故とも梅雨の人だかり

風のない午後の風鈴ポワロ死す
金属音の雨降る街の蛙鳴く
なれなかったヒーローになる青胡桃
それぞれの人にある路地夏銀河
七月の一歩でちがう空と会う
裁かれるものでいる午後のうぜん花
無花果の葉かげ豊かな午後がある
大阿蘇を包み夏霧ついてくる
花合歓の濃くなるあたり阿蘇に入る
言えずきて言わないままの滝しぶき
通勤が重くて芙蓉咲きそろう
カンナのかげが重たい路地の理容室
オクラ咲くくらしに街が遠くなる
句帖なくして跳ねるばったのあとをゆく

ふたりにはふたりの笑い桔梗活け
雲は秋ベッドで動くのどぼとけ
こおろぎの夜が揺れおり副都心
街は銀河に溺れるものを持っている
電子音の街を離るる雨の秋
台風以降鴉がもっとも高くいる
ときめきに蓋する広口壜の秋
色落ちのジーンズきちきちばった飛ぶ
猫じゃらし眠りの浅い傷がある
秋夕焼けくらしに帰ってゆくにんげん
見つかるまで秋夕焼けの影にいる
秋潮の満ちし街道竹輪買う
こおろぎの夜の弾力ちくわ切る
秋風にしゃべる体温わらう体温
水を汲む九月根のあるもの踏んで

玄関に鳴かない虫がいる日昏れ
桐の実が鳴ってまたあるクーデター
鴉に聞く風の花野の歩き方
鯖雲がばらける午後の環状線
にんげんの漂う歴史がある銀河
栗ゆでる途中の「俺たちに明日はない」
ヒッチコックの卵溶いている夜長
花韮や神を待たせる遊びして
ダムとなる村に花蕎麦どきの音
十五夜なり密閉容器が開かない
泡立草揺れる真昼のローカルニュース
体温街に看板鳴らしゆく秋風

蓑虫と会って固めのビター・チョコ
紅葉散るまで夕暮れがやわらかい
自販機のボタンに迷っている立冬
櫨の実が鳴りてとけぬ拳がある
冬銀河遠くて村に来る眠り
にんげんの記憶かすかな野のむかご
楠の実降る都心を出ない鳥がいて
秋夕焼け女はおんなの影を踏む
連れのないベンチに夜の銀杏降る


2006麦収穫祭(第3位)

のほほん     中山宙虫

寒鮒を見ていて水になる家族
冬のチェロ揺れる人からとけてゆく
靴紐を結えずみぞれの刃物店
望郷に揺れる寒灯誰かいて
臘梅の路地に兵隊さんがいる
金柑を頼り寺町をさまよう
少年がかくれて山茶花さわがしい
蕗の薹煮る大筋は純愛で
梅開く湾に触れたい波がある
揺れてきた春がぶつかる唐人屋敷
音たててスープ置かれる春の雨
哀しみを語らぬ家の花水木
混沌を蝶は金網から抜ける
あらそいの地球を呑んでゆく朧
継がれゆく家に燕が巣をかける
青空の蟻のいちにちを見ている
通用口ばかりの舗道石榴咲く
大河小説あとがきにきて桃すする
掌に魚がにおう夏の少年
鳴かぬ蝉都心の風に帰してやる
七月の鉄路に翳のない工区
造船の入り江の音が夕焼ける
夏霧の山頂誰かが缶を切る
かなかなの少年風になるかたち
つまずけば朝の鶏頭燃えている
秋くる雲とことん歩く河童橋
ばった跳ぶ音たてて飛ぶ台東区
ゆく秋のダニー・ボーイを聞く博多
落人の猥談蕎麦は花つけて
ぎんなんの濃くなる風の昨日今日


2007麦収獲祭(第2位)

炭酸飲料     中山宙虫

冬の鯉眠って気化をするつもり
鵯が鳴く午後の駄菓子の当たりくじ
藪柑子数値で生きてゆく人間
映画館出れば耳から冬の街
冬の川跳んでとまどいある着地
街をゆく気まぐれ二月はドアばかり
鵙鳴いて森には森の心電図
厚切りの鮪が乗っている余寒
水仙を活ければ雨の地方都市
傍らは出てくる虫に空けておく
三月の島は真水の中にある
春は無口に極太文字の前ですぞ
わらび追い阿蘇のはずれに立っている
陽がにおう野蒜がにおう土手に寝て
春には春の草の実つけてくる少年
吊橋の僕らを越えてゆく毛虫
アクセル踏んで街の夕凪出てゆくか
七月の売られる陶器にあるゆがみ
草矢飛ぶ豊かな水の村をとぶ
あなたまでの時間問われている白桃
影のまま遠くなるひと稲の花
木製の玩具の音がする八月
落ちる水すべる水ありかなかなかな
つながらぬ会話が続く秋の雨
ガガーリンがふっと出てくる鉄道草
汚れたる草の実ちゃんとついてくる
照れ屋でしたね銀河が星で埋まらない
十月の空だ飛球が落ちてくる
満たされぬひとの目の街黄落す
均されてゆくにんげんや桐は実に


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おじさんの俳句memo(2007年)
2007年はどんな一年だったんだろう? 日本という国に住んでぴりぴりとした風のなかにいて。 しかしその風は自然に吹く風ではなくて。 自然というもの、実は人間が長い年月かけてこわしてきたもので。 純粋に自然という言葉を使えないのではないのかな? この国もゆがみだらけの国になってしまった。 ゆったりとした時間の流れはもうとりもどせないのだろうか? ...続きを見る
おじさん(Age.52)日記By宙虫
2008/03/28 00:28

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